「ボート界には今も八百長が存在します。俺の不正にも共犯者がいたし、誰が、いつ、どのレースで八百長をしたかも、具体的に証言できます」
事件が発覚したのは今年1月8日。名古屋地検特捜部が、「不正に順位を下げる」ことで舟券購入者に利益をもたらし、見返りに現金を受け取ったとして西川氏を逮捕した。共謀して不正に利益を得た西川氏の親族男性も逮捕されている。
競艇のレースは6艇が1周600mを3周するが、最短距離でターンできる最も内側の「インコース」が圧倒的に有利だ。西川氏は、ほぼ確実にインコースのスタートとなる「1号艇」に乗るレースで、故意に順位を下げた。“本命”が1着にならないので当然、高配当になる。共犯の親族男性は、西川氏以外が勝つ舟券を購入し、その払戻金を2人で分け合う手口だった。
「俺は逮捕された時点で(懲役に)行くつもりなので、覚悟はできています。言い訳や抵抗をするつもりはないので、控訴もしません。納得できないことは多々ありますが、すべてを受け入れます」
そう語る西川氏は判決直前に告白本を書き上げていた。11月2日に発売された『競艇と暴力団「八百長レーサー」の告白』(宝島社刊)だ。3年半にわたる八百長の手口を細部まで明かしている。
俺は証拠も持っている
西川氏は著書で、衝撃的な生い立ちも明らかにした。幼い頃に両親が離婚し、六代目山口組・司忍組長の出身組織である「弘道会」傘下の暴力団の幹部だった親戚の家で、“ヤクザの子”として育てられたというのである。その幹部は西川氏が中学3年の時に、所属する組の若頭殺害事件に関与したとして逮捕された。
西川氏の手口は“有利なインコースからわざと負ける”という単純な仕掛けだけではなかった。
〈レースのメンバーと実力、エンジン機力、レース場の特性、当日の天候と水面コンディション、コース取り、人間関係を見極めたうえで、「ある選手を勝たせながら、別のある選手を妨害し、そして自分は3着に入る」といった困難なミッションを驚異的な確率で成功させた〉(前掲書より)
改めて西川氏に聞くと、「強い選手でないと競艇の八百長は成立しません」と話す。
「本命の1号艇で着外(4着以下)が続けば不自然なので3着に留まったり、1号艇でない時に1号艇を潰して負けさせたりするテクニックが必要になる。強くて人気がないと、飛んだ時(本命で4着以下に沈んだ時)にオッズが低いので儲からない。不正をするなら、売り上げが大きくなる1日の後半~終盤レースでやらないと、オッズの変化が大きくなってすぐにバレるということもある」
ただ、自身ほど複雑な手口ではないものの、八百長に手を染める人間は他にもいると証言する。
「本にも書いたが、俺は証拠も持っています。俺は、不正をしている別の選手の情報を共犯者に流し、そこでも利益を上げていました。俺たちと不正の事実を共有していた選手もいれば、そうでない選手もいます。
「5億円以上は稼いだ」
告白本で〈不正に稼いだ金額は、少なくとも5億円以上〉とした西川氏だが、競艇は八百長が成立しやすいとする。
「6艇のレースは3連単の組み合わせが120通り。俺が着外になるとわかれば5艇なので半分の60通りになる。競馬はフルゲートで18頭、競輪は9車、オートレースは8車。1人の不正では、オートレースでも7車で210通りになるだけ。競艇は最も不正が成立しやすい競技で、“一人八百長”でも利益が出る。カネの流れの証拠をはっきり掴まれない限り、発覚もしない。もちろん、競走会は異常投票(不自然なオッズ)をチェックしているので、本気で調べればある程度は明らかにできると思いますが、あとは競走会の問題です」
日本モーターボート競走会は、「判決を大変重く受け止め、選手への指導強化など再発防止に全力で取り組む」(広報課)と説明。告白本については、「全選手に聴取し、他に八百長はないと判断している。本には事実無根の内容が多々あり、法的措置を検討している」(同前)と言い分は真っ二つだ。
“闇の全貌”は、まだ明らかになっていない。
https://news.yahoo.co.jp/articles/4c0502793c2beb4d109e3309716af89ee7b7a3b1
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Source: ぱちとろ速報
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